映画  LE COMBAT DANS L'ÎLE『島の決闘』
27/02/201510:20 Yusuke Kenmotsu
右と左とロミー・シュナイダー
 
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1962年のアラン・カヴァリエ監督作品。本作が彼の長編処女作である。彼はそれ以前にルイ・マル監督の『死刑台のエレベーター(1958)』というエポックメイキングなサスペンス作品に助監督として参加している。『死刑台のエレベーター』の後も『恋人たち(1958)』や『地下鉄のザジ(1960)』をヒットさせたルイ・マルが本作では監修として協力している。カヴァリエ監督と共同で本作の脚本を書いているのは後に監督になるジャン=ポール・ラプノー。逆にラプノーが監督デビューする『城の生活(1966)』ではカヴァリエが脚本に協力していて、持ちつ持たれつの共闘関係を垣間見ることができる。    
 
本作は1962年という製作年が重要な意味を持つ。アルジェリアの独立に反対する右翼軍事組織0ASと思われるような集団が登場する本作は、アルジェリア支配やOAS、さらにはフランスの右寄りの映画人への批判として作られている。本作で初めて政治的な映画に出演したジャン=ルイ・トランティニャンは、これ以降『Z(1969)』や『暗殺の森(1970)』等、続々と政治色の強い作品に出演するようになる。本作では黒いコートにソフト帽、そして黒い革手袋という『暗殺の森』のマルチェロ・クレリチ役で見せたスタイルを先取るような出で立ちも見ることができる。
 
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裕福な工場主の息子で右翼活動家のクレモン(ジャン=ルイ・トランティニャン)には美しい妻アンヌ(ロミー・シュナイダー)がいる。クレモンは活動団体のリーダーであるセルジュ(ピエール・アッソ)に従って、表向きは狩猟クラブと称している軍事訓練に参加している。妻はクレモンの活動は何も聞かされておらず、戸棚の奥に隠されているバズーカを見つけて初めて気づくほどだ。クレモンはある晩セルジュと2人で、このバズーカを使って政治家の暗殺を企てるのだが、セルジュに裏切られ逃亡を余儀なくされる。セルジュを暗殺し、指名手配となったクレモンは南米へと逃れるので、物語から一旦離れてしまう。

アンヌはクレモンの幼い頃の友人ポール(アンリ・セール)の所に身を寄せている。ポールは印刷工で左翼思想なので、現在はクレモンと上手くいっていないのだが、クレモンの居ぬ間にアンヌと急接近し、妊娠までさせてしまう。

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アンヌはポールと出合う以前にも、クレモン以外の男性と仲良くなってクレモンに叱責される場面があり、ポールが現れるとポールとくっついてしまうという、ふしだらな女として描かれている。それは映画の冒頭からも分かることだ。題名、キャスト、スタッフのクレジットの後「パリ、冬の終わり、午前0時過ぎたころ」というナレーションが入り最初に映るのが車の後部座席に座るアンヌ。運転席のクレモンと助手席のセルジュが話をしている中、彼女は手鏡を見ながら髪を梳かしている。規制コードの厳しかった30年代から50年代までの米国映画ならば、真夜中に人前で髪を梳かすこの仕草は間違いなく娼婦を意味するものだろう。本作では後にクレモンと夫婦の関係であると提示されるので、当然娼婦ではない。夫への愛情が無いわけでもなさそうなので、アンヌは肉体的に満たされていない女性なのだ。右翼活動家に否定的なスタンスの製作陣が、破壊活動の不毛さのメタファーとして、クレモンを性的不能者という設定にしているのだろう。
 
本作はピエール・ロムによるモノクロ撮影が美しくて印象的だ。特に闇夜の暗さとそこに浮かぶクレモンの表情の不気味さは本作のメッセージにも合致している。

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前半はクレモンが暗殺を企てるポリティカルスリラーで、中盤からはポールとアンヌのラブロマンス、そして最後に題名の通り、帰ってきたクレモンとポールによる島の戦いが待っているという構造が面白い。
お互い同じ銃(ワルサーP38)一丁で島の立地を活かして戦うのでスリル満点だ。もっとも、製作者の意図で勝者は決まっているし、銃がある種の象徴として用いられてきた事を考えると、性的不能者とアンヌを妊娠させた者の勝敗など火を見るより明らかなのだけれど。
 
 
再放送:2月28日(土)23:00

1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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