映画  IMPARDONNABLES 『許されぬ人たち』
04/11/201400:00 Yusuke Kenmotsu
TV5MONDE 10月放送映画『許されぬ人たち』
 
大人の恋・イン・ヴェニス
 
2011年のアンドレ・テシネ監督作品。原作は同名小説で、作者のフィリップ・ディジャンの他の映画化作品で有名なものはジャン=ジャック・ベネックス監督の『ベティ・ブルー 愛と激情の日々(1986)』がある。
テシネ監督といえば『ランデヴー(1985)』のジュリエット・ビノシュや『ブロンテ姉妹(1988)』のイザベル・アジャーニ、マリー=フランス・ピジェ、イザベル・ユペールや『深夜カフェのピエール(1991)』のエマニュエル・ベアールといったその時代に輝く若手女優とよく仕事をしているイメージ(カトリーヌ・ドヌーヴを主演に据える作品は除く)だが、本作ではキャロル・ブーケとアンドレ・デュソリエというベテラン俳優たちによる大人の恋模様が描かれている。
 
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アンドレ・デュソリエという役者はアラン・レネ監督作品のイメージがあるせいか、60歳をとうに過ぎているにもかかわらず、女性に勇猛果敢にアプローチする役でもあまり違和感なく見られるセクシーな俳優だ。そんな彼は本作では売れっ子ミステリー作家フランシスを演じている。フランシスは気分転換と新作執筆のために、ヴェニスにやってくる。物件を探しにフランシスが不動産屋を訪れている冒頭のシーンこそが、本作において最も映画的で笑壺に入るような場面だ。フランシスは不動産屋でオーナーのジュディット(キャロル・ブーケ)と話し合っているが、希望通りの場所や間取りや家賃の物件がなかなか見つからず、立ち上がってブツブツ言い始める。彼が立ち上がると、カメラが少し移動し、ガラス張りのドアが見えるようになる。ドアの外は雨が降っているようで行き交う人は皆傘を差している。案内できる物件の無いジュディットは立ち上がりドアの所まで行き、ドアを開けて、フランシスが帰るのを促す。ドアを開けた瞬間に外の音が入ってきて、ザーッというかなり強い雨が降っているのが分かる。フランシスが傘を持ってきていなかったということは、つい今しがた降り始めた雨なのだろう。そんな雨の中フランシスは上着を頭からかぶり出ていく、と思いきや外からジュディットの様子をしばらくうかがい、少々濡れた後、再びドアから入るのだ。そして「こんな雨の中追い出すのか」などと言い出すのだが、ジュディットは表情一つ変えず「雨お好きでしょ」と答える。フランシスが困惑しているとジュディットは続ける。「楽園の建築現場は大雨」と彼の作品の一節を暗唱するのだ。これを契機に2人の距離は徐々に縮まっていき、一緒に物件を見に行った際に「ここで一緒に暮らそう」というプロポーズにつながるのだ。

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2人の距離を縮める雨を降らせた演出家は本作において後2回雨を降らせるのだけれど、転調の雨、別れの雨と説話を手助けするような雨なので、映画全体の流れが掴みやすくなっている。
本作にはこの2人の周りに様々な訳ありな人物が登場する。外国で女優をしているフランシスの前妻との娘は、ヴェニスにやってきてフランシスの孫を置いたまま麻薬のディーラーと愛の逃避行に出る。ジュディットの友人であり元交際相手の女性で探偵のアンナマリア(アドリアナ・アスティ)は、男性は恋愛の対象外と言いながら、刑務所に入っている息子ジェレミー(マウロ・コンテ)がいる。
消息が分からなくなった娘を探すためにフランシスはアンナマリアを雇う。そして彼は執筆が思うように進まない中、魅力的な年下の妻ジュディットへの猜疑心から、刑務所あがりのアンナマリアの息子ジェレミーを探偵として雇い、尾行させる。ヴェニスという土地柄、仕事に行くジュディットも彼女を追うジェレミーも船で移動するというのが視覚的な面白さがあっていい場面だ。ジェレミーは探偵の経験などなく当然気づかれてしまうのだけれど、そこはジュディットが大人の対応(!?)で切り抜ける。
 
親子の問題や同性愛、麻薬の問題や自殺未遂する者もいる。ジュディットなど大人の対応により元恋人の息子と関係を持つことになる。しかし2人の周辺に重大な事柄が散らばっていようとも、物語の中心はフランシスとジュディットであり、筆が進まなかったフランシスが新作を完成させ、冷えきっていた2人の関係が修復し始めたのだから、この物語は文句なしにハッピーエンドだと言わんばかりの終わり方はどこまでも爽やかだ。
 
 
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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