映画  MASQUES 『仮面』
18/10/201900:00 Yusuke Kenmotsu
化けの皮を剥ぐ
 

1986年のクロード・シャブロル監督作品。ヌーヴェルヴァーグの旗手であったシャブロル監督作品も70年代や80年代の作品は日本では劇場未公開のものが多く、本作もあまり知られていない作品の一つだろう。

本作はシャブロル監督が愛してやまない女流作家シャーロット・アームストロング、特に『疑われざる者』という作品へのオマージュとして、そのプロットを借りるような形で作られている。『疑われざる者』の主人公が元舞台演出家であったのに対して、本作『仮面』ではテレビ番組の司会者となっている。

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なおこの原作の『疑われざる者』はアメリカですでに1947年に映画化されており、日本では劇場未公開だが『トゥルー・クライム殺人事件』という邦題が付いている。監督は『カサブランカ(1942)』などのマイケル・カーティスで、主人公はラジオの犯罪実話朗読番組の語り手であった。当時の主要メディアであるラジオの業界での殺人事件やトリックに先端技術である録音盤が使われるなど興味深い作品だ。
 
『仮面』ではTVタレントのクリスチャン(フィリップ・ノワレ)が視聴者参加番組の司会者をしている。巧みな話術と笑顔でお茶の間の人気者だ。彼についての伝記を書きたいという青年ヴォルフ(ロバン・レヌッチ)がやって来たので、休暇を利用して郊外の屋敷に招き取材を受けることにした。ヴォルフは本を書き終えるまでクリスチャンの屋敷で暮らすよう勧められる。そこにはマッサージ師のパトリシア(ベルナデット・ラフォン)や口がきけないと言われている運転手のマックス(ピエール=フランソワ・ドゥメニオー)など個性的な使用人がいる。そんな中ヴォルフには気になる人物がいた。それは病弱な女性カトリーヌ(アンヌ・ブロジェ)だ。幼いころに両親を失った彼女をクリスチャンが引き取り養っているというのだが、明らかに覇気がなくほとんどの時間をベッドで過ごし、室内でも日光に当たる時はサングラスをかけている。不審に思ったヴォルフは使用人が彼女のために用意したスープを飲まずにこっそり捨てるよう指示する。
 
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実はヴォルフは伝記を書くのが目的ではなかった。彼は以前忽然と姿を消し、そのまま消息を絶ってしまったマドレーヌという女性を探すためにやってきたのだった。屋敷に置いてあったマドレーヌのテニスラケットなど、次第にマドレーヌの痕跡は見つかるが、使用人などに聞いても、ある日家出したという答えしか返ってこない。

そこでヴォルフは執筆のために使用していたクリスチャンの書斎を物色し、隠してあった書類を見つけるのだった。そこでカトリーヌの危機に気付き、救出に向かいクライマックスへという流れるようなサスペンスの連打はさすがシャブロルと唸らされるだろう。

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本作は80年代のテレビ業界を痛烈に皮肉っていて、見る人が見れば誰のことか分るようにできている。仮面というタイトルも、本性を仮面に隠し外面だけいい偽善者であるTVタレント揶揄しているのだが、その化けの皮をテレビの本番中に剥ぐ本作のラストは爽快だ。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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