映画  ALBERT EST MÉCHANT 『意地悪なアルベール』
26/02/201911:39 Yusuke Kenmotsu
ペットはイノシシ
 
2004年のエルヴェ・パリュ監督作品。1970年代から俳優として活躍していた彼は、後に脚本や監督業に進出する。監督としてはTVドラマを含めると10本ほど手掛けているが、日本で劇場公開されたのは『僕は、パリに恋をする(1994)』のみである。この映画は、ステファンという男が新しい恋人と再婚するために妻と正式に離婚する必要があり、彼女の住む南米の奥地へ訪れる。10数年前に別れた彼女には実は彼との間の子ミミ・シクがおり、ひょんなことからその子をパリに連れていくことになる。現代文明に触れたことのない子供はエッフェル塔によじ登るなど奇行を繰り返し、ステファンが翻弄されるというコメディであった。

この作品での、長い時間の空白、婚姻・血縁関係、現代文明に触れないといった要素はエルヴェ・パリュ監督の最新作である『意地悪なアルベール』にもそのまま引き継がれている。なおこの『僕は、パリに恋をする』は1997年に舞台をパリからニューヨークに移したリメイク作品が作られている。
 
Albert-est-mechant_TV5MONDEApac_2.jpg

パトリック(クリスチャン・クラヴィエ)は今まで存在を知らなかった自身の父ジョーが著名な作家であり、莫大な遺産を残して死んだと知る。ちょうどそのころパトリックはカードが止められるほどの財政難で苦しんでいたので、地獄で仏に会ったような心地であった。しかしジョーは国籍をアメリカに移しており、このままではジョーの腹違いの兄弟であるアルベール(ミシェル・セロー)に遺産がすべて相続されると知り、パトリックは焦る。そしてパトリックはドルドーニュ川の奥深くで一人暮らしするアルベールに、遺産について話し合うために会いに行く。

Albert-est-mechant_TV5MONDEApac_5.jpg

古く汚い山小屋で暮らすアルベールに実際会ってみると大層な変わり者で、全くお金に興味のない人物のようだ。それどころか貨幣経済を真っ向から否定し労働も行わない。自給自足と物々交換が生活の基盤となっている。イノシシと共に暮らすこの老人には遺産など不要なのでパトリックは遺産拒否証明の書類にサインするよう頼む。しかしこれにはアルベールをパリに連れていき書類に直接サインさせなければならない。そうして彼らの珍道中が始まるのだ。

Albert-est-mechant_TV5MONDEApac_4.jpg
 
高速道路でもイノシシが怖がるからと言って40キロで車を走らせるようなマイペースなアルベールはパトリックの家に行っても、パトリックの妻バルバラ(アリエル・ドンバール)の風呂を覗いたりイノシシがキッチンで暴れたりと大迷惑なハチャメチャコメディだ。

到底本気とは思えないような文明批判、資本主義批判はユーモアとして十分に機能しており『僕は、パリに恋をする』同様、何も知らない無垢な者が巻き起こす騒動が笑いを誘う。

 
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

おすすめ

 

おすすめ

 

おすすめ