映画  MAIGRET ET L'AFFAIRE SAINT-FIACRE 『サン・フィアクル殺人事件』
09/01/201914:51 Yusuke Kenmotsu
メグレの帰郷
 

1959年のジャン・ドラノワ監督作品。彼は1920年代に俳優としてキャリアをスタートさせ1930年代に映画の編集者を経て監督となる。代表作というと、ジャン・コクトーの脚本を得てソドムとゴモラの物語を現代に置き換えて撮った『悲愁(1943)』や第1回カンヌ国際映画祭グランプリ作品である『田園交響楽(1946)』だろう。その後もドラノワ監督はヌーヴェルヴァーグの到来まで伝統的で良質な作品を数多く作ることになる。

『サン・フィアクル殺人事件』の原作はジョルジュ・シムノンによる同名小説で、いわゆる「メグレ警視もの」の初期の一編である。本作でメグレ警視を演じるのはジャン・ギャバン。前年に作られた『殺人者に罠をかけろ』に続いてのメグレ役で、後に『メグレ赤い灯を見る(1963)』でもメグレを演じることを考えると、彼のキャリア後期の代表的な役柄と言っていいだろう。

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冒頭車窓から田園風景が見え、ここがパリではない場所だと分かる。パリ警視庁の敏腕刑事であるメグレ(ジャン・ギャバン)は数十年ぶりに生まれ故郷のサン・フィアクルの村に帰ってきたところだ。というのも彼のもとに伯爵夫人(ヴァランティーヌ・テシエ)から直接捜査の依頼が来たからだ。彼女はメグレにとって恐らく初恋の人であった。伯爵夫人が受け取った「裁きの日は来た。灰の水曜日、お前は死ぬ」という文面の脅迫文を見せられたメグレは、問題の日は早朝のミサから付き添うことにした。メグレは司祭の祈祷の間ずっと目を離さなかったはずが、ミサが終わってみると伯爵夫人は目を閉じている。メグレが軽く触れて呼びかけようとするとそのまま床に倒れてしまった。この時夫人はすでに息絶えていたのだ。元々心臓の弱い伯爵夫人が心臓発作で死んだということで自然死として処理されそうなところを、メグレは巧妙に仕組まれた殺人だと見抜き捜査を始める。

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先代の伯爵が生きていたころまではきちんと管理されていたはずが、その息子(ミシェル・オークレール)の放蕩によって少々さびれてしまった城館が舞台装置としてミステリの雰囲気を醸成している。モーリスだけでなく、夫人の秘書をしているサバチエ、執事のゴーチエ、医師など怪しげな容疑者たちにメグレがどうアプローチするかが見どころだ。

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事件は城館に関係者全員を集めてメグレが推理を披露するというミステリのお誂え向きの展開となるのだが、そこに至るまでの道程が直線的すぎず、40年前のメグレ少年を知る雑貨屋のおばさんなどとの何気ない会話を挟むなど緊張と緩和でメグレの人柄も描きながら事件の真相に迫っていく。

滅多にないメグレの地元での活躍ということで、ミステリファン必見の一本だろう。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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