映画  WALLAY 『ワレイ』
15/10/201800:00 Yusuke Kenmotsu
少年ブルキナファソに帰る
 
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2017年のベルニ・ゴルドブラ監督作品。ポーランド人の父とスイス人の母の間に生まれた彼は、スウェーデンのストックホルムで育ち、1990年代後半からブルキナファソを拠点にドキュメンタリーを撮っている監督だ。ブルキナファソに映画製作会社を設立し、アフリカ映画アカデミーの会員にもなっている。
『Ceux de la colline(2007)』という長編ドキュメンタリー作品は50以上の国際映画祭で上映され、多くの賞を受賞している。そして彼の最新作『ワレイ』は初の長編劇映画である。

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13歳のアディ(マカン・ナタン・ディアラ)はパリの郊外で父と2人で暮らしていた。思春期の彼は夜中まで友達と遊びまわり、父の言うことも聞かず、反抗的になっていた。友人から、おそらく盗品である派手なスニーカーを買うと早速それを履き、首にはヘッドホンを巻き付け、ハットを被る。黒人ラッパーを真似るようなスタイルと横柄な態度を見かねた父は、アディを夏の間、自分たちのルーツである故郷に返すことを決心する。

彼らの故郷でありアディにとって叔父にあたる人物が住むのは地中海をはるかに超えたブルキナファソの田舎町であった。ちょっとした旅行気分で来たアディであったが、あまりの文化の違いと想定以上に厳しい叔父に戸惑ってしまう。電気が使えずとスマートフォンが充電できないと大騒ぎするアディに対して、昼間は太陽の明かりで生活できるのよと周りの住人たちは大らかだ。こういったところは電力需要が足りず長年輸入に頼っているブルキナファソの現状を織り込むドキュメンタリー作家らしさと、慣れないアフリカの生活で悪戦苦闘するアディのユーモアがマッチしていて素晴らしい。
 
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アフリカの地に来てもヘッドホンやハットを身に着けていたアディであったが、現地の人たちと触れ合う中で一つずつ装飾が落ちていき、むき出しになっていく様は感動的だ。2日かけて山道を歩いてたどり着く祖母との出会いや交流は確実に彼に変化をもたらした。またそこで出会う少女とのティーンエイジャーらしい淡い恋心の初々しさは、世界共通なのだろう。

この地で13歳というと立派な大人で、通過儀礼として叔父はアディに割礼をしようと考えている。それを知ったアディは必至で拒むが果たしてどうなるか、という珍サスペンスも微笑ましい。

アフリカのブルキナファソという、普段あまり見ることがない国を舞台とした作品であるが、思春期の少年アディのひと夏の成長を描いた本作は、日本の子供たちにも観る機会を作ってあげたいような素敵な作品である。


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1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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