映画  LES COMPÈRES 『気分はダディー』
23/08/201811:54 Yusuke Kenmotsu
3人の父親たち
 
1983年のフランシス・ヴェベール監督作品。彼は1960年代後半に脚本家としてデビューしている。脚本家としてはエドゥアール・モリナロ監督の『殺し屋とセールスマン(1973)』や『Mr.レディMr.マダム(1978)』などのコメディ作品が有名だろう。彼の脚本作品は後に12本もアメリカでリメイクされているというのが質の高さの何よりの証左だ。1976年に監督業に進出してからはピエール・リシャールを主演に迎えたコメディでヒット作を連発した。本作『気分はダディー』と、その前後に作られた『皆に幸あれ!(1981)』『3人の逃亡者/銀行ギャングは天使を連れて(1986)』の3本ではピエール・リシャールに加えてジェラール・ドパルデューも参加している。彼らの個性を最大限に活かしたデコボコなコンビネーションがこれらの作品の魅力である。
 
16歳のトリスタンという息子が突如失踪し、母クリスティーヌ(アニー・デュプレイ)と父ポール(ミシェル・オーモン)は大慌て。警察に駆け込み捜索願を出すが、刑事もやる気があるのかないのか、「そのうち見つかるよ。盗難車が見つかるようにね」などと頼りになりそうにない。
息子は最近できた彼女と一緒にいると推測し、両親は彼女の実家のあるニースに向かう。小さなホテルを営む彼女の父親に会うも、手掛かりがつかめず一旦パリに戻る。

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そこでクリスティーヌが考えたのが17年前に関係を持っていた新聞記者の男性リュカ(ジェラール・ドパルデュー)に助けを乞うことである。ただ助けてというのではなく、息子のトリスタンは実はリュカとの子供であると伝えることで、本気になって探してもらうという魂胆だ。

それだけでは安心できないクリスティーヌは同じく17年前に関係を持っていたフランソワ(ピエール・リシャール)にも電話をかける。彼は今まさに自殺をしようと拳銃を口に咥えたところだった。突然の電話に驚き、拳銃を咥えたままモゴモゴ話すおとぼけはピエール・リシャールならではだ。

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かくしてそれなりに身に覚えのある2人が、自分が父親であるとそれなりに感じ始め、それぞれ捜索を開始する。同じタイミングで同じ人物を探すために同じ写真を持って歩いているのだから当然鉢合わせになるだろう。ここからがこの映画の面白いところだ。お互い自分が父親だと言い合いながらもこのタフガイと神経質男は彼らにしかできないコンビネーションで問題を解決していく。例えばトリスタンと一緒にいるとされる彼女の母に事情を聞きに行くと、笑うべき時でない場面で神経質男フランソワは笑いが止まらなくなってしまう。体を揺らしながら笑っているフランソワをがっしりとした体躯のリュカが上手く隠し、あたかも不安から泣き崩れているように見せて、母親の同情を買い、新しい情報を聞き出すといったチームプレイだ。

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この作品では息子を探す2人、その対象であるトリスタンという2つのグループだけでなく、サングラスをかけた2人組の怪しげな男たちも登場し、三つ巴といった様相を呈している。この三つ巴はブールヴィルやルイ・ド・フィネスなどが活躍した他の70年代のヒットコメディ作品にもしばしば見られるもので、黄金パターンと言っていいだろう。
 
リメイクされることの多いフランシス・ヴェベール作品だが本作もアメリカでアイヴァン・ライトマン監督によって『ファーザーズ・デイ(1997)』としてリメイクされている。また後年フランスにおいても、大きなインスパイアを与えた作品としてパトリス・ルコント監督『ハーフ・ア・チャンス(1998)』を挙げることができるだろう。こちらは子供が息子ではなく娘であり父親候補がフランス映画界の2大レジェンド、アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドということで『気分はダディー』と比べながら観ることをお勧めしたい。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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