映画  BORSALINO & CO. 『ボルサリーノ2』
26/12/201701:21 Yusuke Kenmotsu
ベルモンドの不在、ドロンの活躍
 
1974年のジャック・ドレー監督作品。1960年に長編監督デビューした彼は、『太陽が知っている(1968)』以降、『ボルサリーノ(1970)』、『フリック・ストーリー(1975)』『友よ、静かに死ね(1976)』『ポーカーフェイス(1980)』など数多くのアラン・ドロン作品を手掛けている。ギャング映画を多く制作した娯楽映画の巨匠というイメージが強いが『トレンチコートの女(1985)』ではセザール賞脚本賞にノミネート、モントリオール国際映画祭では審査員賞を受賞している。
 
本作は『ボルサリーノ2』というくらいなので当然『ボルサリーノ』の続編ということになる。余程のことがない限り1作目を観た後にこちらを観るというのが正しい振る舞いであろう。しかし娯楽映画を極めたジャック・ドレーは、冒頭の数シーンでおおよその事の次第が分かり、本作からでも観始められる演出をしている。

アラン・ドロンと共に当時誰もが知るスーパースターであるジャン=ポール・ベルモンドの遺影が大写しになって、厳粛な葬儀のシーンから始まる。これは前作のラストシーンを受けた形で、時制としてすぐ後にあたる。この後、前作でフランソワ・カペラという役を演じたベルモンドは一度も出てこないのだから、『ボルサリーノ』での衝撃のラストは容易に想像できるだろう。

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前作は1930年代前半のマルセイユが舞台。若くて威勢のいいチンピラ2人ロック・シフレディ(アラン・ドロン)とフランソワ・カペラが暴れまわり、街を牛耳るギャングになっていくストーリーを青春映画のような爽やかさで描いていた。

しかしラストで何者かに撃ち殺されたカペラ、その敵討ちに立ち上がるのが本作『ボルサリーノ2』である。前作は2大スター揃い踏みということで見せ場も丁度半々になるような作りであった。それはつまりベルモンドの見せ場には軽やかなユーモアが含まれており、作品全体を柔らかくしていた印象がある。本作では相棒ベルモンドを失って、アラン・ドロン一人ということで彼のクールで怜悧な魅力をたっぷり味わうことができる。
本作ではイタリアから進出してきたマフィアのヴォルポーネ兄弟(リカルド・クッチョーラ2役)との血で血を洗う抗争が描かれる。手始めに疾走する列車から叩き落して殺すという非情なやり方で、シフレディは弟の方を片付けるのだが、これを契機に報復の報復という激烈な抗争の火蓋が切られるのだ。
 
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ヴォルポーネに捕らえられたシフレディは簡単に殺されるのではなく、アルコール漬けのアル中にされて精神病院に入れられる。その間、1935年、36年、37年と字幕で時間の経過が示され、表向きは善政を行いながら裏でギャングとして勢力を拡大しているヴォルポーネたちが描かれる。その時期というのはドイツではヒットラーが一党独裁を始め、権力を掌握していたころで、ファシズムと繋がりを持つヴォルポーネたちを描くことで時代の不穏さも感じられる。

それはベルモンドの不在がちょうどうまい具合にはまっている。底抜けに明るく軽妙な彼がいたのでは、本作のようなギャング同士の泥沼の抗争にはならなかっただろう。

本作『ボルサリーノ2』から観たなら、『ボルサリーノ』も観て、作品の優劣とは全く違った意味での、映画作品における役者の個性とその貢献を考察してみてはいかがだろうか。
 
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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