映画  FROU-FROU 『フルフル』
15/01/201616:06 Yusuke Kenmotsu

恋に生きた女の半生
 



 
1955年のアウグスト・ジェニーナ監督作品。イタリア出身のこの監督はサイレント期からのベテランで、イタリアやフランス、ドイツでも映画を撮っている。現在では彼の作品を観る機会はあまりないけれど、カナダの映画『みなさん、さようなら(2003)』では病院のベッドで難病に苦しむ主人公が、仲間たちと青春時代に観たジェニーナ監督の『沼の上の雲(1949)』でマリア・ゴレッティに扮していたイネス・オルシニに熱を上げていたことを尾籠なユーモアを交えて語っていた。

主演はダニー・ロバン。『巴里の気まぐれ娘(1953)』のような清純派女優の印象が強いが、キャリアの後期にはサスペンス映画の神様アルフレッド・ヒッチコック監督の『トパーズ(1969)』にも出演している。なかでも2人の脚本家が、ああだこうだと言いながらシナリオを創作していく過程を映画にした『アンリエットの巴里祭(1952)』のヒロイン、アンリエット役ではころころとシナリオが変更される映画の女優を可憐に演じていて印象的である。
 
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映画は若い女性ミシェル(イザベル・ピア)が空港にやってくるところから始まる。そしてそのミシェルを追いかけてきたのがフルフル(ダニー・ロバン)だ。ミシェルは母であるフルフルの言いつけを無視して恋人のいるダカールへ飛び立とうとしている。そしてフルフルは娘を思いとどまらせるために、自身の過去を話しはじめ、物語はフルフルの16歳の時代へとフラッシュバックするのである。この映画ではダニー・ロバンが最初に登場する姿が、老けメイクを施したものなのだけれど、最近の映画の醜いほどのリアルさで作り込んだメイクとは一線を画した、ずぼらでいい加減で美しい老けメイクが素晴らしく、女優へのリスペクトも感じられるだろう。

16歳のフルフルは花売り娘で、愛くるしいその姿と物怖じしない度胸を4人の紳士たちに買われ、彼らはフルフルをミュージックホールの歌手にしようと教育を始める。これが思いのほか大成功するのもつかの間、突然現れたガスパールという男に恋して駆け落ちしてしまう。その恋に破れて帰ってきた彼女を4人のうちの1人ウラジミル公爵(ジーノ・チェルヴィ)がロシアに連れて行くことにする。1ヶ月のはずの滞在がロシア革命により7年になり、無一文になってパリに帰ってくる。ところが公爵は別の女性に熱を上げてしまい別れてしまう。次にフルフルは4人のうちの一人サバチエ(ジャン・ウォール)のところへ行く。優しい彼を慕いながら、フルフルは舞踏会で出合った若い画家アルチュス(フィリップ・ルメール)への感情を抑えることができなくなっていた。



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この映画ではフルフルが色々な男性と出合い、別れ、また恋をするのだが、画家アルチュスとは子供ができるということもあり、より印象的なエピソードとなっている。もちろんこの時代の映画では直接的な性描写はないのだけれど、古き良きハリウッド映画から参照したような、恋人2人が浜辺でじゃれ合うシーンがある。米国では1934年から1968年までヘイズ・コードと呼ばれる厳しい検閲制度があり、それを掻い潜るために映画作家たちは様々な工夫を凝らしてきた。寄せては返す波を性的な表現の代替物としていたのも一例だ。
『フルフル』では浜辺で遊ぶシーンの後にフルフルの妊娠が発覚し、それを彼に伝える、伝えない、別れる、別れないといったところが、最終的にアルチュスの事故とも自殺ともとれるような悲劇的な死へと繋がるのだ。
 
少女時代から数多くの恋をして女ざかり、母まで演じきったダニー・ロバンがとにかく素晴らしい。本作の原作者セシル・サン=ローランの小説『ローラ・モンテス』も同じころに『快楽(1952)』や『たそがれの女心(1953)』のマックス・オフュルス監督によって映画化されている。踊り子ローラ・モンテスの数奇な人生を回想形式で華麗に描いたオフュルス美学満載の作品は『歴史は女で作られる(1956)』というタイトルで日本でも公開されたので、本作と見比べるのも面白い。
 
 


FROU-FROU 『フルフル』
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1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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