映画  FUTURES VEDETTES 『恋するレオタード』
25/04/201415:28 TV5MONDE
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上品さと下品さとブリジット・バルドー
 
本作は1955年の作品で日本では未公開。監督のマルク・アレグレは他には『裸で御免なさい(1956)』や『パリジェンヌ(1961)』を撮っていて、『デデという娼婦(1947)』や『奇跡は一度しか起こらない(1950)』のイヴ・アレグレ監督の兄。娯楽の兄と芸術の弟といった印象だ。

主演のブリジット・バルドーは『素直な悪女(1956)』で国際的に大ブレイクする直前で、本作ではトレードマークのブロンドヘアではなく黒髪で登場する。彼女に映画界入りを薦めたロジェ・ヴァディムは本作の脚本を担当している。ヴァディムはELLE誌でモデルをしていたバルドーを映画界入りさせただけでなく、18歳の彼女と結婚までしている。そして後にヴァディムは初監督作品『素直な悪女』をバルドー主演で撮ることになるのだ。ヴァディムはバルドーと別れたあともカトリーヌ・ドヌーヴやジェーン・フォンダ等の華やかな女優たちと浮名を流すことになる生粋のプレイボーイだ。この生粋のプレイボーイが脚本を手掛けたということを頭の片隅に置いて本作を観るのも楽しみ方の一つだろう。
 
映画の舞台はウィーンの音楽院で、全編ウィーンで撮影されている。生徒たちは楽器や声楽やダンスを習っていて、その中のソフィ(ブリジット・バルドー)とエリス(イザベル・ピア)が本作の主人公だ。活発なソフィと地味で控えめなエリスとでは性格が正反対なのだが、2人は親友だ。この2人が想いを寄せるのがエリック(ジャン・マレー)という声楽の教師をしているテノール歌手なので、教師と生徒の恋の鞘当ての物語となる。しかしエリックには別居中の妻マリア(ドゥニーズ・ノエル)がいる。彼女はオペラ歌手として成功しているのだが、恐らくその事が夫婦関係を悪化させているのだろう。

エリックは、自宅で個人レッスンをしようと誘うほどソフィをお気に入りの様子だ。しかし妻の公演先からの電報を受け取ると、車を何時間も飛ばして会いに行く。付き人からマッサージを受けているマリアの楽屋には花束がいっぱいだ。マリアはやって来たエリックに「花なんてうんざり。私が好きなのは白いバラだけよ」と愚痴をこぼす。夫婦らしい会話も特にないまま公演の時間となって、マリアが部屋を出ようとすると、楽屋に遅れて白いバラの花束が届けられる。付き人から花束をどこに置くか尋ねられたマリアは、「そんなの捨てるなりそこらへんに置くなり好きにしてちょうだい」と言いながらバタバタと楽屋を出て行く。白いバラの花束を辛そうに見つめるエリック。その花束には小さなメッセージカードが付いており、そこには「愛しているよ エリックより」と書かれていた。そっとメッセージカードを外し、ビリビリと破いてその場に捨てるエリックの姿は悲しみに満ちている。

エリックは愛人の看護婦とデートをするが気は紛れない。そんな中授業でソフィがマリアの持ち歌をうたうと、エリックは厳しい口調で注意してしまい、怒ったソフィは楽譜をビリビリと破いて教室から出ていってしまう。エリックから慰めに行くよう言われたエリスは、廊下でソフィと愛について語り合っていた。エリスは「動作や言葉で表せないのが愛」であると言い、一方ソフィは「ベッドの中で眠れぬほど愛され、裸で抱き合いたいと欲するのが愛」だと言う。2人の性格の違いがよく出ていて面白いシーンだ。その廊下をエリックが通りかかり、ソフィに何事もなかったかのように、個人レッスンをしようと家に誘うのだから、図太い男だ。

映画内で紙を破るという行為を持った特権的な2人だからという訳ではないのだけれど、エリックとソフィはお互いを求めるようになっていく。そしてある日、エリックに家まで送ると言われたソフィは、授業が終わって車に乗り込む。そしてカットが変わって車はソフィの家の前に着く。学校ではまだ明るい時間だったのが、家に着くと真っ暗になっているのだ。当然省略された時間には2人が愛し合っていたはずなので、街並みの時間の経過だけでセックスを表現する上品な演出だ。屋内のシーンがほとんどの本作では、こういったところでウィーンロケが最大限に活かされている。家に入ると妹は事の次第を察していて、感想を聞いてくる。恐らくは初体験であっただろうソフィは「小説では幸福というけど、それ以上よ」と答える。女性にこう言って欲しいという願望を持つプレイボーイの男が書いた脚本ならではの下品さだ。
 
妻から来た手紙の文言でイライラしていたエリックは、自宅で個人レッスン中のソフィを理不尽に怒って帰らせてしまう。しかしソフィが走って向かった先は温室で、そこの池に入って裸で水浴びをしているのだ。ブリジット・バルドーだからという以外に説明のつかない大胆な演出と言えるだろう。そのことがあってエリックはソフィをより愛おしく思うようになるのだが、喉の病気になった妻がエリックの元に帰ってくる。画面はソフィのアップをずっと捉えているが、音声は画面外の夫婦の親密な会話だ。そして一粒の涙が溢れるまでソフィのアップは続く。ソフィの表情で画面外の2人を想像させる繊細な演出だ。
 
上品さと下品さ、繊細さと大胆さの間を自由自在に行き来する本作のブリジット・バルドーは必見だ。
 
再放送:4月27日(月)21:00
 
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