文化  Mes trois zèbres
今回は1月6日に放送の文学番組La Grande Librairieで取り上げられたアレクサンドル・ジャルダンMes trois zèbres を紹介します。

 
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Titre : Mes trois zèbres
Auteur : Alexandre Jardin
Editeur : Grasset
 
アレクサンドル・ジャルダンといえば、祖父ジャン・ジャルダンが戦時下のヴィシー政権においてピエール・ラヴァル首相の側近で対独協力を主導した中心的コラボであったことを暴露した作品Des gens très biensが記憶に新しい。レジスタンスが英雄扱いのフランスでは、コラボが家族にいたことは負い目であり、家名を汚す事実である。アレクサンドル・ジャルダンの作品には、祖父ジャンが残した負の遺産がいたるとこに存在する。
 
本作は著者の人生を大きく変えた歴史上の3人の人物へのオマージュである。その3人とは、劇作家で映画監督のサッシャ・ギトリ、レジスタンスのシンボルで軍人、シャルル・ド・ゴール、そして愛の放蕩者ジャコモ・カサノヴァ。活躍した時代も世界も性格も全く異なるこの3人がどのようにして一人の男の人生を変えてしまったのであろうか?
 
各々やり方は違うけれども、喜びをそのままに享受し、重大なことも軽妙にしてしまうフランス的な思考に深く感動する、と文中語る。生涯において124もの劇作品と36もの映画作品を残したギトリは、時代の空気感を鋭く感知し、当意即妙のウィットに富んだディアログが、後世のトリュフォーやゴダールに影響を与えたと言われている。私生活で使っている日用品を舞台に持ち込み、私生活においては舞台の設定を家族に強要したというギトリ。徹底したプロフェッショナルがあるからこそ、ギトリは後世にまで名を残す劇作家となったに違いない。ギトリとジャルダンの祖母が一夜を共にしたことがあるエピソードは、未来の小説家にどれだけ多大なイマジネーションを与えたのか考えると興味深い。
 
シャルル・ド・ゴールを慕うことは、ジャルダン家にとってはダブーである。巧妙に隠された僕の死角で、大きな秘密であったと文中語る。軍人らしい率直で簡素な言葉で綴られたMemoires de Guerreを引用し、強固なまでに我が道を貫いたシャルルに敬愛を示している。シャルルにおいても著者との奇妙な接点が浮上する。祖父ジャンとシャルルは言わずもがな敵対する関係。そんな二人があるホテルで壁越しに隣り合って生活をする一時があった。歴史を動かした二人の人物を隔てるにはホテルの壁一枚は薄すぎるように思える。
 
硬派なシャルルから一転、関係を持った女性は近親相姦も含め4ケタ、自由で放蕩に暮らしたカサノヴァが壮年にフランス語で残した自伝Histoire de ma vieを読んで啓発される。カサノヴァのすごいところは、18世紀当時には珍しく女性を同等に扱い尊敬し、快楽を与え、最善の注意を払っていた気配りだ。女性から崇められることに自身の快楽も見出していたようだ。投獄されようとも映画のヒーローのように脱獄し、我が道楽を貫いたカサノヴァに強さと共存するしなやかさを強く感じる。
 
Joue et jouis... 周りから何を言われようとも、頑固なまでに信念を貫いた3人の人物に賞賛を送り、奇天烈な三様の人生と著者の負の遺産を絡め合わせて綴られる本書。人生って意外にしなやかで軽妙洒脱なものだとフランス的に楽観思想にさせてくれる作品だ。
 
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