文化  Au revoir la-haut
『La Grande Librairie テレビ書店』(9月16日放送回)で紹介された作品をご紹介します。
 
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Titre : Au revoir la-haut
Auteur : Pierre Lemaitre
Editeur : Albin Michel
 
史実をリアルに表現するために、あえて「小説」というマスクを被せることがある。特に1914年から1918年にヨーロッパで起こった第一次世界大戦のような惨劇は歴史の教科書よりも小説のほうがわたしたちの心により多くのものを伝え、心に響く。
 
この作品のタイトルは1914年フランス軍内部軍規引き締めのために冤罪で銃殺刑となった数人の兵士の中の一人ジャン・ブランシャールが最期に妻に宛てた手紙の一文である。「最愛の妻よ、天国でまた会おう」
 
フランスのために敵兵と戦って死ぬことが最良とされていた時代に、軍事裁判にかけられ味方に殺されるということは、遺族にとって大変不名誉なことであり、最愛の家族を失しなった悲しみとの二重苦であったことであろう。それが見せしめのためであったならばなおのことだ。作中に印象深い一文がある。「戦中一番恐ろしいのは敵ではなく、味方のヒエラルキーである」
 
作品はarmistice休戦記念日の9日前、1918年11月2日から始まる。軍隊にも休戦のうわさが漂い兵士たちの間の緊張感が緩みはじめたころ、突撃命令があった。この小説の主人公アルベールは突撃の中、味方が後方から銃弾を受けて死んでいるのをみつける。「敵に向かって突撃したのになぜ後方からの銃弾で命を落とすのだろうか、しかも休戦間近に・・・」そしてアルベール自身も味方の罠にはまり生き埋めとなる。そのアルベールを救ったのは片足と顔から半分を爆弾で失ったエドアール。そして休戦、エドアールとアルベール、そして突撃命令の仕掛け人アンリの奇妙な関係がはじまる。
 
エドアールとアルベールは戦死者たちの架空の追悼モニュメントを自治体に売る詐欺行為を思いつき、アンリは戦場で埋められた死体を掘り起こし、共同墓地を作り、130cm足らずの小さな棺桶を用意し遺体の身元確認も不十分なまま遺族をだまし、莫大な富を得る。この共同墓地の詐欺行為、冒涜行為は実際にあった事件である。そして経済界の大物ペリクール家を中心に物語は渦を巻きながら進んでいく。
 
片足や片手など失った元兵士たちの惨めな生活や遺族の癒えることのない悲しみ、沸騰する物価や闇市場、混乱が続く戦後のパリを舞台にさまざまな苦しみが560ページに渡って細密に描かれている。この物語にヒーローは登場しない。生き残ったものは死んだものたちを「英雄」に仕立て利用する。「フランスの英雄」たちの真実の姿を、ピトレスクにこの物語は100年後に生きている私たちに教えてくれる。
 
【紹介した作品の掲載ページ】
http://www.omeisha.com/?pid=64538246

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