文化  ブローニュの森 Bois de Boulogne
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森といえばブローニュ
 
石の街としてのイメージが強いパリですが、実は自然が多いことでも有名です。パリの緑地は2530ヘクタール以上あると言われ、それはパリ全体の面積の4分の一に当たります。大都市にしては信じられないほど緑が豊か。その緑地の多くを占めるのが、パリの東西にある森です。特に有名なのはパリの西にあるブローニュの森。19世紀のパリで、森といえばブローニュを意味していました。
 
ブローニュの森はどんな場所?
 
パリの西にある面積845ヘクタールの広大な森で、パリジャンの憩いの場になっています。区画としてはパリ16区に当たり、高級住宅地に隣接しています。かつては狩猟用の森でしたが、19世後半にオスマンによるパリ改造の一環として整備され、一般開放されました。ロンドンのハイドパークから着想を得て作られ、フランス式とは異なったダイナミックな作りが特徴です。凱旋門からも歩いていくことができ、パリで一番幅の広いフォッシュ通りを西へ向かうと、森へ入ることができます。ボート遊びができる池もあり、ピクニックや散策にも最適。犬の散歩やジョギングをしている人もよく見かけます。そのあたりはヴァンセンヌの森と変わりありません。森の茂みには野兎もよく見かけます。森はとても広いので1日で歩いて全てを回るのは難しいです。いくつかに絞って回るか、車や自転車を借りて回るのがおすすめです。
 
名前の由来は?ブローニュの森の歴史
 
その昔ブローニュの森は修道院の領地だったようです。ヒルデリック2世が717年にサン・ドニ修道院にこの森を寄進したことが文献に残されています。その後、12世紀頃にフィリップ・オーギュストによって王家の狩猟場として買い戻されました。
 
ブローニュという名前の由来はフィリップ4世がフランス北部にあるブローニュ・シュル・メールにある教会へ巡礼したあとに、1315年にパリの森の近くに小さなブーローニュのノートルダム教会を作ったことから。その後ブローニュの森と呼ばれるようになったそうです。
 
百年戦争のあった14世紀ごろから森には山賊が住むようになり、パリの人々に恐れられました。16世紀のアンリ2世とアンリ3世の時代には森は壁に囲まれ、8つの門で守られるようになりました。17世紀、アンリ4世によって15000本の桑の木が植えられたと言われています。フランス革命期には逃亡者たちの隠れ家にもなり、19世紀のナポレオンの時代に入ると、イギリス・ロシアの兵士によって森は荒らされました。
 
しかし1852年に森がパリ市に移管されると、当時のフランス皇帝だったナポレオン3世は、森の改造に着手します。彼は亡命中のロンドンで公園の緑に慰められた経験からパリの街に緑が必要だと痛感し、森をパリ市民のための自然公園として整備したのです(ナポレオン3世がパリ帰国後にクーデターによって権力を握ったことがパリを大きく変革させたといえます)。整備に当たって4つの人造湖と滝が作られ、ブナ・杉・栗・セコイアなど20万本の植林が行われました。
 
公園が整備された当時(19世紀後半)、パリは自然ブームでした。パリ植物園が社交の場となり、鉄とガラスでできた近代的な温室の中でカフェや読書を楽しみましたが、もっと自然を味わいたい人はブローニュの森に出かけたといいます。ただパリの中心部から歩いていくには遠かったので、上流階級の人々は馬車や車で遊びに行きました。当時は自転車も流行りでした。ツーリングクラブのシャレというカフェには当時のモードをけん引した女性たちが集まって自転車を楽しんだそうです。そして現在、ブローニュの森はパリ市民の憩い場として19世紀から変わらぬ人気のエリアとなっています。 
 
もう一つの顔。危険な香りがする森の中
 
憩いの場として人気のブローニュの森ですが、それと同時に夜は娼婦が徘徊したりする治安の悪さも指摘されています。女性が一人で歩くのは危険な場合が多く、複数で行くのがおすすめです。昼間には怪しげな男性が女性に声をかけたり、夜には移民の娼婦たちが客を探して歩いていることがあるようです。パリには巨大な売春組織があるとも言われ、娼婦が危険というのではなく、そのような組織の存在自体が問題だと言えそうです(映画「96時間」にもその問題は出てきます)。ともあれ、観光であれば昼に行くのがベストです。
 
森には何がある?
 
ブローニュの森は自然だけではなく、多くの施設があります。森の南側には全仏オープンテニスで有名なローラン・ギャロス・スタジアムがあります。競馬場も2つあり、平地レース使われるロンシャン競馬場と障害レースで使われるオートゥイユ競馬場があります。日本でも有名になったロンシャン競馬場は、聖王ルイの妹イザベルが建てたロンシャン修道院があった場所に1858年にできた競馬場です。そのあと1873年にオートゥイユ競馬場ができました。北東には順化動物園という子供向けの小さな動物園もあります。森の北西にはバラで有名なバガテル公園があり、美しい花々を見ることができます。森の中にあるプレ・キャトラン、アルムノンヴィルという瀟洒なレストランも人気です。湖の中に浮かぶ島にあるレストラン ル・シャレ・デ・ジルでは静かで優雅なひとときを過ごすことができます。このレストランの建物はナポレオン3世が妃のために建てたもので、パリの中心部にはない特別な時間が流れています。
 
ブローニュの森にあるサーカス団
 
ブローニュの森には冬だけ開かれるサーカスがあり、パリジャンに人気です。その一つがシルク・ナシオナル・アレクシー・グリュスというサーカス団。ブローニュの森の入り口にあるテントでサーカスを開催しています。1974年に設立されたサーカス団で、グリュス家を中心とした出演者が馬や象などの動物と共に信じられないほど感動的でダイナミックなサーカスを見せてくれます。土の円形舞台があり、その周りを3000席の客席が囲んでいます。団長アレクシー・グリュスのもとで息子が象使いをして、娘が馬の調教芸を行い、孫がバランス芸をマスターしています。一家総出でサーカスを盛り上げているところも特徴の一つです。サーカスは家族単位で経営することが多いのですが、三世代が総出演するサーカス団は珍しいそうです。特に優雅な馬の曲芸で定評があり、象や馬が動物というよりは見事な共演者となって観客の心をつかみます。冬のブローニュの森に行ったときには、是非冬のサーカスを楽しんでみてはいかがでしょうか。 
 
Cirque National Alexis Gruss
住所:Carrefour des Cascades Porte de Passy 75016 Paris 
 
ブローニュの森
パリ西部にある森
最寄りメトロ:ポルト・ドフィーヌ(Porte Dauphine)、ポルト・ドートイユ(Porte d'Auteuil)、レ・サブロン(Les Sablons)、RER C線 アヴェニュー・フォッシュ(Avenue Foch)、RER C線 アヴェニュー・アンリ・マルタン(Avenue Henri Martin)
東京出身。慶應義塾大学文学部卒。 大学時代に写真撮影を始める。2007年、パリに一年間滞在して写真を制作。 以後毎年パリへ出かけ、変化し続けるパリと変化しないパリを撮り続けている。 他にパリを舞台にした小説を書いている。

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