文化  シャトゥー
印象派の島へ
パリ郊外(Yvelines県)にChatou(シャトゥー)という島があります。ここはかつて印象派の画家たちが集まり、「印象派の島」(Ile des Impressionistes)と呼ばれていました。特に画家オーギュスト・ルノワール(1841-1919)にとってはお気に入りの避暑地だったそうです。印象派の絵が好きな方やパリから離れた自然に触れたい方には最適のパリ郊外です。パリから電車(RER)で20分ですので日帰りの小旅行におすすめです。
 
かつて舟遊びが行われた週末のバカンス島
シャトゥーはパリ下流のセーヌ川の中にある島。パリの喧騒を離れて静かな島を散策できるのでパリ観光に疲れた方にぴったりです。ルノワールが「パリ周辺で最も美しい場所」 と手紙で書いたこの島は今でも美しい自然に囲まれています。都市開発を逃れ、昔の面影を残すシャトゥーは、印象派の画家たちに愛されていました。19世紀末には多くのパリジャンが週末の舟遊びをするためにこの島にやってきました。ここでルノワールが 「シャトゥーでの舟遊び」(Les Canotiers a Chatou, 1879)という絵を描きました。今は絵の描かれた場所に絵のレプリカが立てられています(写真)。 

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シャトゥーにあるレストラン・フルネーズ ルノワールが最愛の人と初めて出会った場所
またシャトゥーはルノワールにとって妻となる女性と初めて出会った大切な場所でもありました。38歳の時、まだルノワールは画家としてサロンで認められたばかりの頃でした。そのときシャトゥーのレストランで出会ったのが20歳のアリーヌ・シャリゴでした。ブルゴーニュ地方の素朴な魅力を持つアリーヌを気に入ったルノワール。ふくよかでバラ色の健康的な肌を持つアリーヌは、ルノワールにとって最高の女性だったのでしょう。ルノワールは彼女をモデルに多くの絵を描きました。彼女がモデルとして描かれている作品には「舟遊びの人々の昼食」や「田舎のダンス」などがあります。二人の子どもにも恵まれ、次男ジャンは後に偉大な映画監督になります。1890年に二人は正式に結婚します。アリーヌは生涯夫のそばを離れず、老後にリュウマチを患ったルノワールを介護しました。 
 
ルノワールに描かれたレストラン
シャトゥーの魅力は自然だけではありません。島の中にレストラン・フルネーズがあります(写真)。19世紀にフルネーズとその家族が開いたこのレストランは、ルノワールの名画「舟遊びの人々の昼食」(Dejeuner des Canotiers, 1880)が描かれた場所として有名です。屋外にあるバルコニー席に座れば、絵画の中にいる人々も浴びたであろう幸せな光を感じられるかもしれません。フルネーズは経営者を失った後1990年まで放置されていましたが、その後当時を再現した改装が施されて昔と同じレストランとして営業を再開しています。レストランの隣にはフルネーズ美術館もあり、シャトゥーを描いた画家たちの絵を見ることができます。ルノワールの絵画も展示されています。印象派の画家たちがいた100年以上前のフランスは想像できませんが、きっとルノワールの絵のように皆帽子を被ってワインを飲んで舟遊びをしていたのでしょう。なんとも浮世離れした幸福な光景ですが、この島に降り注ぐ光の中にいるとそれもうなずけます。

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東京出身。慶應義塾大学文学部卒。 大学時代に写真撮影を始める。2007年、パリに一年間滞在して写真を制作。 以後毎年パリへ出かけ、変化し続けるパリと変化しないパリを撮り続けている。 他にパリを舞台にした小説を書いている。

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